江戸狂歌・都都逸その2
馬鹿な奴だといわれておくれ粋がわたしの身の苦労
『日本歌謡集成 巻十一 近世編』(高野辰之編/東京堂/昭和36年刊)の「巷歌集」と題した中にあった「よしこの節」(大坂で歌われた、都々逸のルーツのひとつ)。「粋(すい)」が「好(す)い」にかかっていることは想像できるが……。「オレはみんなから馬鹿だと言われている男だよ」「ああどうぞ言われておくれ。そんな馬鹿な奴を好いてしまうのは粋人のすること。粋を身上にするわたしは苦労するねぇ~」。結局、自慢か?
ぼんやりしていりゃ小馬鹿にされる力みゃやっぱり銭がいる
『風迅洞私選どどいつ万葉集』(中道風迅洞・編/徳間書店)に掲載されていた都々逸。馬鹿がらみはこれしかなかったが、面白いものがたくさん載っている。都々逸って何? って興味を抱いた方にはこの本をおすすめします。
寝るより楽はなかりけり浮世の馬鹿は起きて働く
この戯れ歌はほうぼうで耳にするし、漫画やエッセーなどで目にもするが、出典は特定できなかった。ただ、同じ意味のことが、「世の中に寝る程楽は無きものを知らぬうつけが起きて働く」(狂言『杭か人か』)、「寝るは楽起きて地獄の夢を見る寝続けにするこれぞ極楽」(『春波楼筆記』)など、狂歌にも詠まれている。
酒も煙草も女もやらず百まで生きた馬鹿がいる
何度か目にして耳にもしたが、どこで見たのか聞いたのか、まるで記憶にない。まあ、都々逸には違いないだろう。柳家三亀松あたりがテープやレコードに残した音源を調べていけば見つかるかもしれない。ちなみに国文学者の物集高量(もずめたかかず。1985年没。享年106)は、あと何年かで百歳になるというとき(今から30年くらい前だったと思う)に、テレビ番組「11PM」のインタビューで「女の人のどこが一番可愛いですか」と聞かれ、歯の抜けた口でうれしそうに「あそこ」と答えていた。インタビュアーの質問は、「女の人のどこが一番可愛いですか」じゃなくて、「女の人のどこが一番好きですか」だったかもしれない。
初出:2008年5月30日
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