フール・オン・ザ・ストレッチャー
予定の4時よりだいぶ遅れて、脊髄注射をすることになった。そのまま手術室に運んでいけるように、病室の中でパンツを脱いでT字帯をつけ、その上にゆかたを羽織ってストレッチャーに横になる。
いきなり脊髄注射をすると腹が立つほど痛いらしく、まずはお尻に麻酔を注射。これが筋肉注射で、すごく痛い。ちょっと腹が立った。
麻酔が効いてきたところで脊髄注射。当然ながら、なんにも感じない。
1時間かそこら待たされたあと、手術室へ向かう。病室からエレベーターを経由して、手術室のあるX階(何階か忘れた)まではいつも世話になっている看護婦2、3名がストレッチャーを押してくれる。エレベーターを降りたところで、X階の看護婦にバトンタッチ。患者の名前(オレの名前)とか病名、手術する部位、執刀医なんかを看護婦同士で確認しあう。このとき、ゆかたの前をあけ、左脚の付け根の脱腸部分にマーカーみたいなもので印が付けてあることも確認する。
この「申し送り」だかなんだかを終えると、9階の看護婦チームはX階の看護婦チームに向かって「あと、よろしくお願いします」、オレには「吉田さん、何か心配なこととかあったらなんでもX階の看護婦に聞いてください。それじゃあ、手術が終わったら迎えにきますからね」と言って去っていった。オレは基本的に世話を焼かれるのは好きじゃないんだけど、なんか大事にされてるような感じで、悪い気分じゃなかった。ただ、おじいさん扱いされてるような気もした。若い看護婦たちは、患者が若い女でも、やはりおじいさんに対するように接するのだろうか。
手術系看護婦チーム2名にストレッチャーを押されながら黙り込んでいるのもなんなので、
「執刀のY先生って、この手術が最後で明日からほかの病院に移るんだってね」
と、話しかけた。
「えー、なんで知ってるんですかー」
食いつきがいい。たぶん、やさしさだろう。
「だって、さっき先生が自分で言ってたもん」
なんて感じで話していると、
「吉田さんて、手術初めてなんですよねぇ」
「うん」
「ぜんぜん緊張とかなさってないですよね」
「うん」
「すごいですよねぇ」
「そうなの?」
何がすごいの? って言い方をしながら、じつはすんげーいい気分。調子にのって、ウルトラマンが巨大化しそうになった話までしてしまった。
「でも、そういうの、珍しくないよね」
「うん、フフ」
と2人で顔を見合わせながら、オレの下ネタにも好感触を見せた看護婦たちだったが、すぐに、
「それじゃ吉田さん、手術の準備ができるまで、ちょっとこのままお待ちくださいね」
ストレッチャーはとっくに手術室の前に到着していて、看護婦たちは次にやらなきゃいけないことがあるのに、オレの話につきあってくれてたみたいだ。
予定の4時よりだいぶ遅れて、脊髄注射をすることになった。そのまま手術室に運んでいけるように、病室の中でパンツを脱いでT字帯をつけ、その上にゆかたを羽織ってストレッチャーに横になる。
いきなり脊髄注射をすると腹が立つほど痛いらしく、まずはお尻に麻酔を注射。これが筋肉注射で、すごく痛い。ちょっと腹が立った。
麻酔が効いてきたところで脊髄注射。当然ながら、なんにも感じない。
1時間かそこら待たされたあと、手術室へ向かう。病室からエレベーターを経由して、手術室のあるX階(何階か忘れた)まではいつも世話になっている看護婦2、3名がストレッチャーを押してくれる。エレベーターを降りたところで、X階の看護婦にバトンタッチ。患者の名前(オレの名前)とか病名、手術する部位、執刀医なんかを看護婦同士で確認しあう。このとき、ゆかたの前をあけ、左脚の付け根の脱腸部分にマーカーみたいなもので印が付けてあることも確認する。
この「申し送り」だかなんだかを終えると、9階の看護婦チームはX階の看護婦チームに向かって「あと、よろしくお願いします」、オレには「吉田さん、何か心配なこととかあったらなんでもX階の看護婦に聞いてください。それじゃあ、手術が終わったら迎えにきますからね」と言って去っていった。オレは基本的に世話を焼かれるのは好きじゃないんだけど、なんか大事にされてるような感じで、悪い気分じゃなかった。ただ、おじいさん扱いされてるような気もした。若い看護婦たちは、患者が若い女でも、やはりおじいさんに対するように接するのだろうか。
手術系看護婦チーム2名にストレッチャーを押されながら黙り込んでいるのもなんなので、
「執刀のY先生って、この手術が最後で明日からほかの病院に移るんだってね」
と、話しかけた。
「えー、なんで知ってるんですかー」
食いつきがいい。たぶん、やさしさだろう。
「だって、さっき先生が自分で言ってたもん」
なんて感じで話していると、
「吉田さんて、手術初めてなんですよねぇ」
「うん」
「ぜんぜん緊張とかなさってないですよね」
「うん」
「すごいですよねぇ」
「そうなの?」
何がすごいの? って言い方をしながら、じつはすんげーいい気分。調子にのって、ウルトラマンが巨大化しそうになった話までしてしまった。
「でも、そういうの、珍しくないよね」
「うん、フフ」
と2人で顔を見合わせながら、オレの下ネタにも好感触を見せた看護婦たちだったが、すぐに、
「それじゃ吉田さん、手術の準備ができるまで、ちょっとこのままお待ちくださいね」
ストレッチャーはとっくに手術室の前に到着していて、看護婦たちは次にやらなきゃいけないことがあるのに、オレの話につきあってくれてたみたいだ。
つづく