江戸川柳その1
出典:『誹風柳多留』(山澤英雄・校訂/岩波文庫)、『誹風柳多留 拾遺』
※カッコ内に「初」や「二」などの数字のみあるものは『誹風柳多留』の篇数、「拾遺」とあるものは『誹風柳多留 拾遺』の篇数を示している。
※カッコ内に「初」や「二」などの数字のみあるものは『誹風柳多留』の篇数、「拾遺」とあるものは『誹風柳多留 拾遺』の篇数を示している。
いかだのり馬鹿馬鹿しくも野を戻り(二篇)
山から切り出して谷川に浮かべた木材を運搬するために筏に組んで下流に運ぶ筏乗り。その姿はなかなか凛々しいものだったろう。だが、木材を相手方に渡してしまえば、「帰りには宿なしとなる筏乗り」(江戸川柳)。林業が重要な産業だった時代のことで、なんか、女にモテて寝場所にも不自由しなさそうなんだけど。
馬鹿ばかり言って鼓を叩くなり(一一篇)
年の初めに家々を回って鼓を打ちながら歌い踊り、その家の繁栄を祝福する三河万歳の様子を詠んだもの。以前は正月になるとテレビ番組で、きらびやかというか派手というかキンキラの衣装を着た三河万歳の保存会か何かの方々が舞い踊る姿を見ることができたが、21世紀になって目にしなくなった。たぶん、いまでも続いてるんだろう。テレビに出ないだけで。
馬鹿なこと娘に金を蹴られ損(一三篇)
口説いた娘にことわられ、それでもめげずにアタックしたはいいが、結局は急所を蹴られてジ・エンド。これは蹴られた本人が詠んだ句ではなく、蹴られるところを見ていた誰かが詠んだ、という体裁の、想像で作った句。
鼻毛抜きかたくつかんで馬鹿な面(一三篇)
鏡を見ずに鼻毛を抜くとき、これといって表情に特筆すべき点はないが、鏡を見ながら鼻毛を抜くと鼻毛をよく見ようとして集中した間抜け顔になる。オレの場合。
どこへでもくっついて出る馬鹿亭主(一五篇)
そのうちピンでやっていけるようになるといいね。
初物のうちからきゅうり馬鹿にされ(一七篇)
「初物を食うと七五日生き延びる」と言われ、初鰹は江戸っ子に大人気だったのに対して、なぜきゅうりが軽んぜられたのか。という問いに対しては、「別に馬鹿になんかされてなかったんじゃねーの?」と答えておきます。
初出:2008年3月10日