2013年2月26日火曜日

脱腸手術入院マニュアル その1 裏目った腹筋運動

はじめに

fc2ブログ版『馬鹿の手帳』に、2008年3月15日から2008年6月6日にかけてアップしたネタです。ネタっつーか、実話です。

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裏目った腹筋運動

「80歳まで20本の歯を残しましょう」っていう歯科業界のキャンペーン広告を新聞だかなんだかで見て、80歳まではとても生きられないけど、とりあえず歯を丈夫にしなきゃという気になった。だいぶ前のことで、キシリトール・ガムなんて便利なものはないし、プラークコントロールっていう概念もなかったので(あったかも)、カルシウムをたっぷり摂る以外にない。
 嫌いじゃないし簡単だから、煮干を1本、2本と食い始めた。そして3本目。  ゴキっ!
 あまり口の中ではしてほしくない音がした。カラがまぎれこんだカキフライを食ったとき以上のイヤな感じ。
 舌で口の中をぐるっと探ると、左下の奥から2番目の歯があるべきところに舌先がスポっと入り込んだ。だいぶ前に治療してあった奥歯が、半分なくなっていた。
 いわゆる「裏目った」ってやつだ。相当ヘコんだ。のちに、半分残った歯が歯周病の原因となり、臭かったり痛かったり熱が出たりといろいろあった末に抜歯。このときの発熱と風邪のせいで、行く予定だったフジロックにもサマーソニックにも行けなくなった。
 今から10年ほど前(1998年)、39歳のときには、奥歯破損事件以上にヘコむ出来事があった。
 ハードに腹筋運動をしていたときのことだ。
 肉体改造計画が始動して2年目で、毎日まじめに腹筋運動をしていたが、ヘソから上の脂肪はそこそこ落ちているのに、ヘソから下がまるで女の人の下っ腹みたいにポッコリと出たまま。毛も生えている。
 ヘソ下に最も負荷がかかるにはどうすればいいかと、あっちを押したりこっちを引っ張ったりしていて、効果のありそうな体位というか運動を見つけた。まず、あおむけに寝て、上体を起こすと同時に両脚を上げる。いわゆるV字姿勢だ。ここから両手を太ももにあて、その力に逆らうように両脚を思いっきり跳ね上げる。こうすると、たるんだ下っ腹の中の腹筋がパッキーンと硬直するのがわかる。脂肪の薄皮(厚めの薄皮)があるので見た目にはそれほど変化していないが、でも、わかる。
 その状態をキープできる限界は5秒ほどだったけど、20回もやれば相当効果があるはず。 1回、2回とやって3回目。
 ボグっ!
 あまり急所まわりではしてほしくない音がした。急所まわりでしてほしいのは、もっと別の音だ。
 別の音の話はいいとして、左太ももの付け根のリンパ腺あたりに違和感がある。ちょっとふくらんでいる。痛みはない。でも、もしリンパ腺が破裂してリンパ液が流れ出してふくらんでいるのなら、かなりヤバいはずだ。リンパ腺だぞ。腺という字が関係した異変が起こると誰だってビビる。
 あんまり恐いので、見てみぬふりをしようかと思った。
 見て見ぬふりは得意だ。小学生の頃、真夜中に目が覚めるとオフクロが苦しんでいる。恐いので寝たふりをしたまま布団の中で固まっていた。間もなく、タクシーの運転手らしき人(一瞬だけ薄目で確認した)とオヤジがオフクロをかかえ起こして部屋から出て行く気配がした。ああ、ヤバいヤバいとビビって、そのくせそのうち眠ってしまった。大人になってオフクロに、「あのときオレ、起きてたんだ」と発表したら、すんげー冷たい目で見られた。
 左太ももの付け根のふくらみがリンパ腺関係じゃなくてどうやら脱腸らしいってことが3日後くらいにわかった。図書館で見た本には「手術をしなければ完治しません。絶対に!」と書いてある。小学校に上がる前に、体中のどこでも触ったところの皮がペロってめくれる「てんぽうそう」(たぶん「天疱瘡」と書く)とかいう病気にかかったことがあって、入院経験はこの1回だけ(小児結核で入院したとオフクロから聞かされていたが、自分には記憶がない。オレのおやじ方の親戚の結核のおっさんがついオレを抱いてしまったのが原因で、「それを止められなかったオレが悪がった」と言ってオフクロが複雑な顔をするのでカッコの中に入れておく)。手術はもちろん未経験だ。体にメスを入れることは別にどーってことなかったが、金がかかりそうなので、めちゃめちゃヘコんだ。
 それでもメンドくさいのですぐには医者に行かずに、ふくらみを手で押し込んで「このまま治ったりして」なんて淡い期待を抱いて、で、ちょっと腹に力が入るとボコって腸が出て、「やっぱムリに決まってんじゃん」ってことを1日に何度も繰り返していた。 結局、2週間くらいして新宿のJ病院に行った。

つづく

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