2013年5月30日木曜日

七五調の馬鹿8

江戸俳句その3
きく馬鹿にきかぬ馬鹿あり鹿の声
 京都の俳人、嘯山(しょうざん)(1801年没。享年84)によって安永2年(1773年)に編まれた「俳諧新選」(古典俳文学大系『中興俳諧集』集英社)から卯雲の句。いくら江戸時代とはいえ、鹿が当然のような顔をして人里を歩いていたわけはなく、春から秋には山奥に引っ込んでいただろう。人里近くまでおりてくるのは雪の積もった冬。いずれにしてもそんな鹿の声に聞き耳を立てているのは、発句にハマった馬鹿な物好きくらい。とはいえ、鹿の声はなかなか風情があっていいものだから、まったく関心を示さないというのも馬鹿なことだ、などと解釈してはみたが……。あの、竹でできた鹿(しし)おどしが、田畑を荒らすけものよけだということを考えると、この解釈には無理があるかも。なお、卯雲ってどういう人? と聞かれても困る。だいいち、「ううん」なのか「ぼううん」なのかさえわからない。※これを書いた2008年5月には卯雲をネットで調べてもわからなかったが、いま検索したらいろいろ出ていた。
馬鹿につける薬とならば屠蘇くま
 同じく「俳諧新選」(古典俳文学大系『中興俳諧集』集英社)から、奇抜な作風で知られた江戸の俳人、存義(そんぎ)(1782年没。享年81)の句。馬鹿につける薬を飲むと、泣きたくなることがあります。
馬鹿鳥ののめりありくや雲の峰
 化政期に成美(せいび)(1794~1816年)、巣兆(そうちょう)(1761~1814年)らとともに江戸の三大家と称された道彦(みちひこ)(1819年没。享年63)の自選句集「蔦本集(つたのもとしゅう)」(古典俳文学大系『化政天保俳諧集』集英社)より。雲の峰は夏の季語で、入道雲のこと。馬鹿鳥はアホウドリのこと。“のめりありく”は、アホウドリが不器用に歩く様子の描写。あ、つんのめるののめるか。
初出:2008年5月19日

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