セネカ
われわれの馬鹿さ加減たるや、ただ単に苦痛に悩まされるだけではなく、苦痛を想像することによっても悩まされるほどであって、ちょうど子供たちを黒い影がひどく脅かすがごとく、また、仮面の醜悪な表情や眉を顰めた人の顔が彼らを脅かすがごとくである。
「あなたは1時間後にぎっくり腰になります」と宣告されたら相当ヘコむが、「あなたは今日明日中にぎっくり腰になります」って知らされるよりまし。で、「1年以内にぎっくり腰になります」の場合は、あんまり気にしなくなるかも。
感謝しない人間には二種類ある。その第一は、当人が馬鹿だから感謝しないのである。
この手の、言い方きっぱり内容ぼんやりなセリフには反論のしようがない。
馬鹿者はあらゆる悪徳をもっているが、しかし元来すべての悪徳に傾斜するという性質ではない。或る者は貪欲に、或る者は放蕩に、また或る者は短気に傾くのである。
スペシャリスト志向。
「われわれの馬鹿さ加減…」「感謝しない人間…」「馬鹿者はあらゆる悪徳を…」/出典:古代ローマで皇帝ネロの教師として働くが最終的には自殺を命じられてあえない最後を遂げたストア派の政治家・道徳家、セネカ(紀元前5年頃~後65年)の「道徳論集」(『セネカ 道徳論集(全)』茂手木元蔵訳/東海大学出版)より。モンテーニュの「エセー」にもセネカの格言が盛んに引用されるなど、後世の思想家にも影響を与えた。「いまどきの若者は」的な道徳論を説くのに都合がいいためか、一時は日本でもセネカの言葉は便利に使いまわされていた。でも今は、お役御免状態。人口比から見ても行儀のよくない年寄りの数が増えて、へたにセネカなんか持ち出すと「いまどきの年寄りこそなってない」と反撃されかねないので、しょうがないか。
初出:2008年3月2日
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