下宿の食 その1 手作り料理よりインスタント
1976年、18歳のオレが住んでいたのは2階建ての下宿の3畳間で、朝夕の2食が付いていた。部屋に水道はなく、1階の一番奥の配膳室に水道と流しがあった。朝夕の決まった時間になると下宿生約20人分の食事が並ぶので、各自自分の食事を部屋に運び、食い終わったら食器を配膳室に戻しておくというシステムだった。
朝食も夕食も基本的に丼のご飯一杯と、しょうゆ汁ひと椀、おかず1品というラインナップ。
おかずの内容は野菜炒めや野菜の煮物、野菜のてんぷらなど野菜が中心。1週間に1回だけ、コンビーフの炒め物とか、ちょろっと肉が入った野菜炒め、近所の肉屋で特売しているメンチカツが出た。魚のおかずは、オレがこの下宿で暮らした10か月間で2回だけだった。
しょうゆ汁の具は、お麩が中心。たまに具だくさんの日もあったが、うれしくはなかった。具が、前日に下宿生が残したおかずだったから。20人分のしょうゆ汁に入れられるだけの具を確保できるということは、20人の下宿生のうち少なくとも3、4人以上は、食えずに配膳室に戻していたはずだ。ただでさえ不人気のおかずが再利用される。一粒で二度おいしいというフレーズがあるが、この場合は、一品で二度まずいということになる。
具だくさんのしょうゆ汁に入っていたのは、たとえばインゲンのてんぷら。"しょうゆ汁にてんぷら!?"と衝撃を受けながらも、食えなくはなかった。
でも、コンビーフのてんぷらが入ったしょうゆ汁とか、小さくカットした特売メンチカツが入ったしょうゆ汁とかは、どうしても好きになれなかった。
こんな下宿の飯だけでは、栄養価はもちろんカロリーもまったく足りない。かといってたびたび外食するほどの金もない。そんな下宿生のお腹と心を満たしてくれるのがインスタントラーメン。
カップラーメンもすでに普及していたが、下宿生には高かった。100円くらいした。駅の立ち食いそばでも100円の時代だ。京王線の電車の初乗り料金は忘れたが、券売機で5円玉が使えた時代だ。カップラーメンに100円は出せない。インスタントラーメンはといえば、近所の小さい食料品店で、サッポロ一番みそラーメンが30円で買えた。ほかの商品は定価なのに、なぜかサッポロ一番のみそだけはスーパーより安かった。
問題は、部屋にも配膳室にもガスコンロのない下宿でいかにお湯を調達するか。
カセットコンロの存在は知らなかったし、知っていても下宿生が気軽に買えるような値段じゃなかったろう。だが、金のない学生をターゲットにした商品が存在していた。用途を湯沸かしだけに特化したポットタイプの電熱器がその代表だ。アルマイト製の縦長ポットの下部に、たぶんニクロム線かなんかが仕込まれているだけの簡単な作りで、値段は数百円。ヤカンより安かった。
この電熱ポットを使ってサッポロ一番みそラーメンを作る。
手順
電熱ポットのニクロム線だかなんだかはヤワですぐ切れてしまうので、1~2カ月に1個のペースで買い替えなきゃならなかった。ぜんぜん地球に優しくない。金属からなんらかの物質がお湯に溶けだしていそうで、たぶん人体にも優しくなかったはずだ。
初出:2010年1月25日
1976年、18歳のオレが住んでいたのは2階建ての下宿の3畳間で、朝夕の2食が付いていた。部屋に水道はなく、1階の一番奥の配膳室に水道と流しがあった。朝夕の決まった時間になると下宿生約20人分の食事が並ぶので、各自自分の食事を部屋に運び、食い終わったら食器を配膳室に戻しておくというシステムだった。
朝食も夕食も基本的に丼のご飯一杯と、しょうゆ汁ひと椀、おかず1品というラインナップ。
おかずの内容は野菜炒めや野菜の煮物、野菜のてんぷらなど野菜が中心。1週間に1回だけ、コンビーフの炒め物とか、ちょろっと肉が入った野菜炒め、近所の肉屋で特売しているメンチカツが出た。魚のおかずは、オレがこの下宿で暮らした10か月間で2回だけだった。
しょうゆ汁の具は、お麩が中心。たまに具だくさんの日もあったが、うれしくはなかった。具が、前日に下宿生が残したおかずだったから。20人分のしょうゆ汁に入れられるだけの具を確保できるということは、20人の下宿生のうち少なくとも3、4人以上は、食えずに配膳室に戻していたはずだ。ただでさえ不人気のおかずが再利用される。一粒で二度おいしいというフレーズがあるが、この場合は、一品で二度まずいということになる。
具だくさんのしょうゆ汁に入っていたのは、たとえばインゲンのてんぷら。"しょうゆ汁にてんぷら!?"と衝撃を受けながらも、食えなくはなかった。
でも、コンビーフのてんぷらが入ったしょうゆ汁とか、小さくカットした特売メンチカツが入ったしょうゆ汁とかは、どうしても好きになれなかった。
こんな下宿の飯だけでは、栄養価はもちろんカロリーもまったく足りない。かといってたびたび外食するほどの金もない。そんな下宿生のお腹と心を満たしてくれるのがインスタントラーメン。
カップラーメンもすでに普及していたが、下宿生には高かった。100円くらいした。駅の立ち食いそばでも100円の時代だ。京王線の電車の初乗り料金は忘れたが、券売機で5円玉が使えた時代だ。カップラーメンに100円は出せない。インスタントラーメンはといえば、近所の小さい食料品店で、サッポロ一番みそラーメンが30円で買えた。ほかの商品は定価なのに、なぜかサッポロ一番のみそだけはスーパーより安かった。
問題は、部屋にも配膳室にもガスコンロのない下宿でいかにお湯を調達するか。
カセットコンロの存在は知らなかったし、知っていても下宿生が気軽に買えるような値段じゃなかったろう。だが、金のない学生をターゲットにした商品が存在していた。用途を湯沸かしだけに特化したポットタイプの電熱器がその代表だ。アルマイト製の縦長ポットの下部に、たぶんニクロム線かなんかが仕込まれているだけの簡単な作りで、値段は数百円。ヤカンより安かった。
この電熱ポットを使ってサッポロ一番みそラーメンを作る。
手順
1 電熱ポットに入れられるだけの水を入れる。
2 プラグをコンセントに差し込む(この時代の電熱ポットにスイッチはない)。
3 サッポロ一番みその麺を袋から出し、丼にセット。
4 お湯が沸いたら半量を丼の麺に注ぐ。
5 丼に週刊プレイボーイでフタをして、3分たったら、適当な容器にお湯を捨てる。
6 ふやけた麺の上に粉末スープをふりかけ、残ったお湯を注ぐ。
7 週刊プレイボーイでフタをし3分たったら出来上がり。
電熱ポットのニクロム線だかなんだかはヤワですぐ切れてしまうので、1~2カ月に1個のペースで買い替えなきゃならなかった。ぜんぜん地球に優しくない。金属からなんらかの物質がお湯に溶けだしていそうで、たぶん人体にも優しくなかったはずだ。
初出:2010年1月25日
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