2014年2月6日木曜日

老いと若さをめぐる名言9

サキャ・パンディタ 2
自分の力が整わない
その間は敵を敬い
力がそなわったら好きにせよ
と他の論書にある。
 オレは、力がそなわろうがそなわるまいが、敵とは遠く離れていっさい関係を持ちたくない派です。
出典:今回もサキャ・パンディタの『サキャ格言集』(今枝由郎訳/岩波文庫)より。
初出:2008年8月13日

2014年2月4日火曜日

東京ドメスティック 13

マイ共同便所

 オレのアパートには4部屋あって、そのうち3部屋は倉庫として使われている。住んでいるのはオレだけ。だから共同便所は、“共同”とはいっても、実質的にマイ便所だ。壁一枚をへだてた隣が便所であり、距離的にもマイ便所と呼んで差し支えない。自分の部屋の窓を開けて左を見ると、約90センチ先に便所の小窓がある。だから、ウチに遊びに来た友達が用を足し終えて「おーい吉田~、紙ねーぞ」ということになったら、傘のさきっぽにトイレットペーパーをぶら下げて渡したりもできるのである。


 数年前は4部屋すべてに人が住んでいた。
 控えめに言ってもみなおっさんで、酒飲みの下痢っ腹じじいばかりだった。
 部屋にいると、用を足す音が臨場感たっぷりに聞こえてくる。
 たとえば、
「ブリュッ、ブリ、ブリリッ」
 あるいは、
「う~~~~~~~~~~ブバッ!」
 はたまた、
「サラサラサラサラサラ」


 糞ったれじじいたちは3人3様の汚し方をした。
 Y中さんは、和式便器内の2、3方向に向かって勢いよく汚し、さらに便器のヘリ(おもに右側)に、ちょろっと足跡そくせきを残す。以前は便器の中だけを汚していた。便器のヘリにウンコを乗っけるようになったのは大腸ガンの手術を受けてからだ。
 Y中さんは汚れた便器をそのままにしておくので、オレが掃除する。
 Y中さんはすごく顔の怖い人で、ちょくちょくアパートの窓を開け、向かいのカラオケスナックや道行く酔っ払いに怒鳴り声を浴びせていた。そんな怖い人に「自分で掃除してください」とか、そんなこと言おうなんて気にはならない。銭湯で会ったら背中に絵が描かれていて、その絵が線画っぽかったからといって、「塗り絵ですか?」なんて聞けるはずもない。


 U田さんは、顔はやさしげだったが、やはり怒鳴る人だった。携帯電話で話しながら便所に入り、出すものを出し、電話の相手に怒鳴り、出し、また怒鳴るという感じで忙しかった。Y中さんより頻度は少なかったが、U田さんも便器の外(おもに左側)を汚す人だった。便器の左側のヘリにぺちょっと残されていた。U田さんは左利きだ。紙を持った左手を斜め後ろから尻へと回し、かたや拭かれる側もお尻のほうからお迎えに、ということで肛門が便器の左側のヘリの上まで来たところでうんちが落下し一瞬遅れて紙が肛門に、とういうことなのだろう。
 で、U田さんが汚したあともオレが掃除する。U田さんには勝てそうな気がするが、人によって態度を変えるのも面倒だし。


 A藤さんが汚すのは便器の内側だけだった。だが、音に関してはいちばんインパクトがあった。ものすごい破裂音だった。A藤さんの後に便所に入ると、散弾銃でも打ったみたいに便器内一面に飛び散っていた。破裂音の大きさに見合うだけの汚れっぷりだった。
 A藤さんが発するのは、下からの音だけじゃなかった。ちょくちょく、上の口からも強烈な音を発した。
「オロオロオロオロロ~、はあはあ、ペッ!」
 A藤さんがゲロるのは朝であり、その時間帯はオレの食事の時間でもあった。
 オロオロの音を発するA藤さんと、その音を聞きながらメシを食うオレ。
 1枚の壁をへだてた向こうとこっちで、口の使い道が正反対の2人なのでした。

初出:2010年11月4日

2014年2月3日月曜日

馬鹿をめぐる名言49

ローベルト・ムージル 3
かなり野心的な小説で、ほとんど匿名の読者のあいだをしばらく貸本として回覧された本の欄外に見出される書き込みを、どうかご欄になっていただきたいものです。読者が作者と二人だけになれるここでは、読者の判断が好んで「馬鹿!」という言葉で表現されたり、「低能!」「ナンセンス!」「度しがたい阿呆!」などという、愚かさと同等の言葉で表されたりします。
「馬鹿! 低能! ナンセンス! でも好き」とか言われてみてーな。
出典:そしてまた今回もローベルト・ムージルの『ムージル・エッセンス ――魂と厳密性』(圓子修平・岡田素之・早坂七緒・北島玲子・堀田真紀子訳/中央大学出版部)の中から、1937年に行なわれた講演「愚かさについて」(岡田素之訳)より。
初出:2008年7月9日

2014年1月31日金曜日

ひとり大喜利「ひとり喜利」/次のことわざを完成させなさい。「豚に〇〇」。

次のことわざを完成させなさい。「豚に〇〇」。
█ お題 次のことわざを完成させなさい。「豚に〇〇」。
回答
豚に牛のうまさを教わる
教わらなくてよし。
█ お題 次のことわざを完成させなさい。「豚に〇〇」。
回答
豚にも引けを取らぬ
食べる量? 肥満の具合?
█ お題 次のことわざを完成させなさい。「豚に〇〇」。
回答
豚にリードをゆるす
いい勝負をしてどうする。
█ お題 次のことわざを完成させなさい。「豚に〇〇」。
回答
豚によりけり
何だってそうだぞ。
█ お題 次のことわざを完成させなさい。「豚に〇〇」。
回答
豚になって知る豚の恋
なんか、うるせーな。じゃ、また次回。

2014年1月29日水曜日

ダジャレにひと言40 坂本龍馬を斬る

お題:ダジャレにひと言足して、なんか悲しいダジャレを作ってください。悲しくなくてもいいですし。
笹かまと龍馬を切る
いやいや、笹かまは切らなくていいですよ。
笹かまじゃなく龍馬のほうを気にしてあげて。
初出:2012年5月23日

2014年1月27日月曜日

馬鹿をめぐる名言48

ローベルト・ムージル 2
誰かに面と向かって、あなたは天才だとか聖者だとか述べたりすれば、それは自分自身に関してそう主張するのとほぼ同じく、言語道断なことでしょう。
 面と向かってあなたは天才だとか神だとか言われたら、こう返そう。

「うるせー」
出典:今回もローベルト・ムージルのエッセイなどを集めた『ムージル・エッセンス ――魂と厳密性』(圓子修平・岡田素之・早坂七緒・北島玲子・堀田真紀子訳/中央大学出版部)の中から、1937年に行なわれた講演「愚かさについて」(岡田素之訳)より。
初出:2008年7月9日

2014年1月24日金曜日

老いと若さをめぐる名言8

サキャ・パンディタ 1
人は長寿を願いつつ
老いを恐れる。
老いを恐れつつ長寿を望むのは
愚者の邪見である。
 老いて愚かになる。
 恥じるまい。
 愚か者でいこう。
出典:モンゴル帝国が拡大を続けていた時代のチベットで政治家として活躍し、さまざまな学問分野でも多数の著作を残したサキャ・パンディタ(1182~1251年)の『サキャ格言集』(今枝由郎訳/岩波文庫)より。サキャというのはもともとは地名(中央チベットの西に位置している)で、ここに本山を構えた仏教の一派がサキャ派となり、その開祖のひ孫がサキャ・パンディタ。
初出:2008年8月13日